片麻痺患者さんは、
自ら運動問題を解決している!
学校では習わない評価とアプローチ
-CAMR勉強会のご案内-

PT/OT/STの養成校では、
人の運動システム(身体)を構造と各組織・器官の働きから理解します。
たとえば筋肉は力を生み、骨・関節はその力に支持と方向を与える。感覚器官は、身体や環境の状態を脳に伝え、脳は状況を判断し命令を筋肉に伝える、等です。

この理解の仕方は機械の理解の仕方と同じです。「モーターは力を生み、ギアは力を伝え、センサーは必要な状態を伝え、コンピュータが状況を判断、命令する」わけです。

「転倒しやすい」などの問題が起こると、
悪くなった要素を探します。
下肢の筋力低下が見られると、「転倒という問題の原因は下肢筋力低下である」と因果の関係を想定して、下肢筋力の強化を図ります。
この「悪いところを探して良くする」も機械の修理法である「悪いところを探して交換する」と同じ問題解決方法です。

もちろん人体も物理法則に従うし、ある程度機械的な構造から理解できますのでこの「人の体を機械として理解する」見方はある程度効果的です。

ただ人は動物であり、機械ではありません。動物には動物なりの機械とは異なった作動があるのです。機械は壊れると止まったり異常な動作を繰り返したりして必要な働きができなくなります。

でも人では、やり方を変えてなんとか必要な働きを生み出そうとします。

たとえば、
腓骨神経マヒでは下垂足が起こります。
するとつま先が床に引っかかって転倒しやすくなります。

そうすると膝を高く挙げる鶏歩という新たな歩行のスキル(課題達成の方法)を生み出して、安全に歩けるようになるのです。

つまり人では、課題達成に問題が起こると新しい運動のやり方-「運動スキル」-を新たに生み出して課題を達成しようとします。

これを異常歩行と呼ぶのは失礼です。

患者さんはマヒの起こった体でなんとか問題解決をして必要な課題を達成しておられるのです。

機械が故障すると異常動作を繰り返すばかりで課題を達成できなくなります。
人では異常な動作をしているのではなく、マヒによってそれまでとは異なったやり方を新たに生み出して課題を達成しているのです。
人の運動システムは、機械と違って必要な課題を達成することに向かって、柔軟に対応しようとしているのです。

CAMRではこのような人の運動システムの作動を「自律的問題解決の作動」と呼んでいます。人の体は単に障害に打ちひしがれているだけではなく、自ら問題解決をして、必要な課題を達成しようとしているのです。

では、
この視点で片麻痺患者さんを見るとどうなるでしょう?

従来片麻痺患者さんの症状は「陰性徴候」と「陽性徴候」という二つの異なった種類の症状で説明されてきました。

これは約1世紀前に英国の神経生理学者のジャクソンが提案した「階層型理論」という仮説が基になっています。

この仮説では、
片麻痺患者さんは様々な症状に苦しんで打ちひしがれているように描かれます。

でも「人の運動システムは必要な課題を達成するために問題解決するものだ」と考えて片麻痺患者さんを見てみます。

たとえば片麻痺で半身がマヒすると、マヒ側の下肢を振り出せなくなります。
そうすると非麻痺側の下肢を中心に立って体幹の伸展・回旋などを使ってマヒ側下肢を振り出すという「分回し」のやり方を新たに創造します。
これによって歩くという課題を達成できるわけです。患者さんは問題解決をしているのです。

もちろん患者さん自身が問題解決しているからセラピストは何もしなくてもよいというわけではありません。セラピストは柔軟性や筋力・持久力を改善して、より速く、より長く、より安全に分回しの歩行スキルを洗練するための運動スキル学習を行うことができます。

また発症直後には半身には弛緩性マヒが現れます。弛緩性マヒは可動性のある骨格が水の袋に入っているようなものです。

プラスチックの袋に水を入れてテープルにおかれると、重力に押されて床に押しつけられ安定するまで広がろうとします。弛緩状態の部位にもこれが起きているわけです。これでは動けませんね。
そこで人の体は問題解決を図ります。

つまり身体の中に筋肉を硬くするメカニズムを探してそれらを強く働かせて、弛緩した筋肉を硬くするのです。
硬くなれば支持ができるようになるし、あるいは一つの塊として非麻痺側と一体になって動けるわけです。

ジャクソンの陽性徴候の仮定では、マヒ側が硬くなり過緊張が出てくるのは伸張反射の亢進現象である「痙直あるいは痙性」と呼ばれる症状として考えられます。

CAMRではこれを
「弛緩状態から動き出すための問題解決の作動」と考えます。

もちろん応急的な問題解決なので新たな問題が生じます。体を硬くする作動が過剰に繰り返されて硬くなりすぎるのです。
これはCAMRでは、問題解決が過剰に繰り返されて新たな問題を生み出す「偽解決状態」と呼ばれます。
リハビリで大事なのはこの「偽解決状態」を改善することです。それから支持性と運動性のバランスを学んでいただきます。そうすると患者さんは自ら生み出した支持性をより上手く利用して必要な生活課題の達成力をより高めることができるのです。

こんなふうに人を機械としてではなく、動物の作動の特徴で見ていくと新しい理解が生まれ、新しいアプローチが生まれてきます。

新しい視点を身につけるとは、これまでとは異なった理解とアプローチを身につけることになります。リハビリのセラピストとしてより幅広い問題解決の能力を身につけることになるのです。
是非とも一緒にCAMRについて検討してみませんか?

今回、6月25日20時00分に
" 運動システムの作動 "に基づいたCAMRという考え方についてオンライン勉強会を開催します。

当日は、
今回の記事で紹介した内容に加えて、
実際の臨床場面でも様子も交えながら詳細に解説いたします。
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講師プロフィール
西尾 幸敏 ( にしお ゆきとし )

理学療法士 
CAMR研究会代表。上田法研究会理事。
1991年にアメリカのイリノイ大学に留学。
ケシュナー助教授の下、システム論と課題主導型アプローチを学ぶ。
2007年よりドイツの講習会にて「 システム論を基にしたアプローチ 」を3回にわたり担当。
2013年システム論をベースにしたCAMR研究会を創設。